Affiliation:
1. 兵庫県立西宮病院救命救急センター(鴻野公伸は,現在,市立伊丹病院に在籍している。)(Emergency and Critical Care Medical Center, Hyogo Prefectural Nishinomiya Hospital)
Abstract
要旨カプノサイトファーガ・カニモルサスは主に犬・猫の口腔内常在菌である。ヒトへの感染の頻度は少ないものの,一旦感染すると全身状態が急激に悪化して敗血症性ショックやDICに至ることが多く,最近では認知の広がりとともに症例の報告が増加している。しかし,電撃性紫斑病合併例の報告は極めて少ない。一般的に,電撃性紫斑病を合併する敗血症の生命予後は極めて悪く,また急激な経過をとることが知られている。症例は70歳の女性。入院4日前に犬に指を軽く噛まれたが,自己判断で医療機関は受診しなかった。入院2日前に発熱し,入院前日に意識障害が生じたため,前医へ救急搬送された。原因不明の敗血症性ショックと診断され,集中治療目的に当院へ転院となった。当院受診時,明らかな咬傷痕は認めなかったが,顔面や四肢末梢に表在性の点状出血斑を認めた。第2病日に創部等の培養を提出し,第15病日にその創部培養と喀痰培養からカプノサイトファーガ・カニモルサスが検出された。集中治療により敗血症性ショックは軽快し救命できたものの,手指や耳介,鼻尖,口唇の血流障害は改善せず壊死へ至ったため,第26病日に電撃性紫斑病と診断した。複数回の手術加療を要し最終的に四肢切断に至った。明らかな咬傷痕がなくとも,動物咬傷の病歴があればカプノサイトファーガは鑑別に含めるべきである。
Reference16 articles.
1. 電撃性紫斑病(purpura fulminans)—正しい病態の把握と皮膚所見による迅速な診断が重要である;久保 健児;日集中医誌.,2009
2. グラム陰性菌 Capnocytophaga属;鈴木 道雄;臨と微生物.,2019
3. 人と動物の共通感染症の最新情報(10)カプノサイトファーガ感染症;鈴木 道雄;日獣医師会誌.,2019
4. Current Management of Purpura Fulminans: A Multicenter Study
5. Acute Infectious Purpura Fulminans: A 15-Year Retrospective Review of 28 Consecutive Cases