The Japanese Journal of Antibiotics
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急性腹膜炎に対するCefminoxの臨床的検討
臨床効果と組織内濃度について
西代 博之橋本 伊久雄三上 二郎吉本 正典中村 孝沢田 康夫葛西 洋一中西 昌美
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1985 年 38 巻 5 号 p. 1178-1194

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抄録

急性化膿性腹膜炎は一般外科において, 感染性疾患の典型的なものであり, 日常最も手掛けることの多い疾患の1つである。この治療の原則は, 手術的に原発病巣の除去あるいは感染源の遮断を行い, 腹腔内に貯溜する膿汁を排出すると共に, 毒素及び腸管麻痺による中毒症状や全身の血行障害を排除し, 更に抗菌性化学療法を施行することである。
急性汎発性腹膜炎となり, 麻痺性イレウスを合併し, Endotoxin shock等を併発すれば, 死亡することも稀ではないが, 抗生物質の進歩, 普及している今日, 軽症あるいは急性初期の限局性腹膜炎の治療は, ドレナージ併用の時期, 適応を誤らなければ, さして困難であるとは言えず, 大部分の腹膜炎は比較的治療しやすい疾患の1つとなつていると言える。特に軽症で比較的限局した, あるいは限局する傾向の強い腹膜炎では, 化学療法剤だけによる治療で治癒することも稀ではなくなつてきている1~4)。
しかし最近になつて, 現在幅広く用いられているAmpicillin, Carbenicillin, SulbenicillinなどのPenicillin系抗生物質, Cephalothin, Cephaloridine, CefazolinなどのCephalosporin系抗生物質の多くに耐性を持つβ-Lactamase産生菌の存在が指摘され, 特にこれはEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter sp. 等のグラム陰性桿菌に多く認められ, これらの菌群は, 急性腹膜炎の起炎菌として今日多く認められている細菌群であるところから, 腹膜炎治療上の大きな問題となつてきた5~7)。
著者らは最近β-Lactamase抵抗性を有する新しいCephamycin系抗生物質Cefminox(CMNX, MT-141)8~12)の試用を行う機会を得た。急性虫垂炎に合併した限局性あるいは汎発性腹膜炎, 腸閉塞症, 消化管穿孔などによる急性腹膜炎の手術に際して, 各種組織あるいは膿性腹水中のCMNX濃度を測定した。これらの症例に, 術後の化学療法としてCMNXによる治療を行い, 臨床効果の検討と, 組織及び体液中濃度, 更に起炎菌のMICとの関連を検討して, 若干の興味ある成績を得たので報告する。

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